使い方ガイド
- 緩衝液でブランクを取って測った A280 を入れます。
- 光路長は 1 cm のままにしてください。短いセルやマイクロボリューム機を使った場合だけ変えますが、その種の機器もふつうは 1 cm 換算値を出します。
- 手元の係数の種類を選び、値を入れます。モル吸光係数なら分子量も必要です。
- 係数がない場合は、下の残基数の欄を埋めてください。配列から求めます。
💡 指数は e で入力できます。たとえば 1.5×10⁻⁵ は 1.5e-5 と入力します。
計算式と注意点
Beer-Lambert の A = ε·c·l を濃度について解いたものです。このページの全部がその一行で、難しさはすべて ε にあります。ε は「あなたのタンパク質の性質」であって、誰かが代わりに与えられる数ではありません。
入口は三つ、計算は一つです。
- モル吸光係数から
- c (mol/L) = A ÷ (ε × l) そして mg/mL = c × MW
- A(1 %, 1 cm) から
- c (mg/mL) = A ÷ (A(1 %) ÷ 10 × l)
- ε0.1 % から
- c (mg/mL) = A ÷ (ε0.1 % × l)
残基ごとの寄与
| 残基 | ε₂₈₀ への寄与 | 備考 |
|---|---|---|
| トリプトファン | 5500 M⁻¹cm⁻¹ | たいていのタンパク質で総和を左右します |
| チロシン | 1490 M⁻¹cm⁻¹ | |
| シスチン | 125 M⁻¹cm⁻¹ | ジスルフィド結合1本あたりで、システイン1個あたりではありません |
三つの係数の流儀は、同じ吸光度を別々の基準濃度で書いたものです。ε はモルあたり、A(1 %) は 10 mg/mL 溶液の吸光度、ε0.1 % は 1 mg/mL 溶液の吸光度です。A(1 %) を10で割ると ε0.1 % になります。だからこのツールは値の大きさから推し量らず、どれなのかを尋ねます。
注意点
- ⭐ このツールは既定の吸光係数を載せません。抜けているのではなく「決めた」ことです。「A280 が 1 ならおよそ 1 mg/mL」はどこでも繰り返されますが、あなたのタンパク質についてそれを真にしてくれる一次資料はありません。このサイトは判定の場に出典のない数を置きません。ウェスタンブロットの変動係数の閾値でも、形質転換効率の合格線でも、同じ理由で断ってきました。
- 出典のある方法は組成から求めることです。ε₂₈₀ = 5500·n(Trp) + 1490·n(Tyr) + 125·n(シスチン)。Pace CN, Vajdos F, Fee L, Grimsley G, Gray T (1995), How to measure and predict the molar absorption coefficient of a protein, Protein Sci 4(11):2411-2423 — タンパク質80種、実測値116件に当てはめた式です。
- ⚠️ 原論文の限界もそのまま付いてきます。トリプトファンを含むタンパク質では信頼でき、含まないものでは信頼度が落ちます。折りたたまれた状態・水溶媒が前提です。6 M 塩酸グアニジン中では残基ごとの寄与が変わります。
- ⚠️ シスチンはジスルフィドの「対」であって、システインの個数ではありません。遊離システインを数えると、その項がおよそ2倍になります。このページで読み違えられる唯一の入力なので、ラベルに書き下しています。
- 測定値は直線範囲に入れてください。1 cm の光路でおよそ 0.1〜1.0 です。それを超えると分光光度計は直線でなくなり、出てくる数はもう吸光度ではありません。希釈して測り、倍率を掛けて戻してください。
- 核酸も 280 nm で吸収します。純粋なタンパク質のはずなのに A260/A280 が 0.6 をかなり超えるなら、測定値は水増しされており、この換算は濃度を過大に見積もります。
よくある質問
正直な既定値が存在しないからです。280 nm の ε はトリプトファン・チロシン・シスチンの含量から決まり、実在のタンパク質のあいだで一桁以上ちがいます。「代表的なタンパク質」の値を仕込むのは、空欄にしておくより悪い。目に見えて欠けている代わりに、黙って間違うからです。数は出るのに、疑う理由がなくなります。
配列からです。トリプトファン・チロシン・ジスルフィド結合の数を数えてこのページの欄に入れれば、Pace の式で計算します。データベースにあるタンパク質なら、ProtParam と供給元の資料が同じやり方で計算した同じ値を載せています。
精度は落ちますし、原論文がそう述べています。チロシンとシスチンも吸収するので数は出ますが、この式は主にトリプトファンを含むタンパク質に合わせられており、含まない場合はばらつきが大きくなります。Trp のないタンパク質なら、実測の係数か発色定量法のほうが安全です。
数千から数万の大きな数なら、M⁻¹cm⁻¹ 単位のモル ε です。5〜20 くらいなら A(1 %) で、10 mg/mL 溶液の吸光度です。0.5〜2 くらいなら 1 mg/mL 基準の ε0.1 % です。変わったタンパク質では範囲が重なるので、このツールは推し量らずに尋ねます。
モル吸光係数のときだけです。mol/L を mg/mL に変えるのが分子量だからです。A(1 %) や ε0.1 % を使えば質量濃度が直接出るので、分子量は任意です。入れればモル濃度も一緒に出ます。
おそらく問題があります。多くの分光光度計は 1.0 あたりで直線範囲を外れ、それより上では吸光度を実際より低く読みます。10倍に希釈して測り直し、濃度に10を掛けて戻してください。10倍希釈で読んだ 0.24 のほうが、希釈しない 2.4 より良い数値です。