緩衝液 pH の計算ツール

緩衝液の pH、または目標の pH にするための調製量を求めます。pH を求めるか、調製量を求めるかを選んでください。
pH は pKa に、共役塩基の濃度を弱酸の濃度で割った値の常用対数を加えた値です。pH=pKa+log10[A⁻][HA]

酸型と塩基型の濃度から、緩衝液の pH を求めます。

リン酸 (pKa2) の文献 pKa です(20–25 ℃ の値 — 下の参考文献を参照)。書き換えられます。

使い方ガイド

  1. 計算の種類を選びます。「pH を求める」は酸型と塩基型の濃度から pH を求め、「調製量を求める」は目標の pH からそれぞれの型をどれだけ使うかを求めます。
  2. 緩衝液を選ぶか、ご自分の pKa を入れます。一覧から選ぶと pKa が入ります。
  3. 「pH を求める」では、塩基型と酸型の濃度を入れます。
  4. 「調製量を求める」では、目標の pH と全体の濃度を入れると、それぞれの型の濃度が出ます。全量と分子量も入れると、秤量する質量 (g) まで出ます。空欄なら濃度だけを表示します。

💡 指数は e で入力できます。たとえば 1.5×10⁻⁵ は 1.5e-5 と入力します。

計算式と注意点

緩衝液は、弱酸とその共役塩基をいっしょに含んだ溶液です。入ってきた酸は共役塩基が、入ってきた塩基は酸が受け止めるため、pH があまり動きません。

酸解離平衡から出発し、両辺の −log を取ると次の式になります。

ヘンダーソン・ハッセルバルヒ
pH = pKa + log₁₀( [塩基型] ÷ [酸型] )

ここから2つのことがそのまま読み取れます。2つの型が同じ濃度なら log の項が0になるので pH = pKa です。そして効いてくるのは絶対の濃度ではなく比なので、全体を2倍に薄めても pH は(近似的に)そのままです。

調製量の求め方

目標の pH が、2つの型の比を決めます。

r = [塩基型] ÷ [酸型] = 10^(pH − pKa)

全体の濃度をその比で分けると、それぞれが出ます。

塩基型
[塩基型] = 全体 × r ÷ (1 + r)
酸型
[酸型] = 全体 × 1 ÷ (1 + r)

体積と分子量を掛ければ、天びんに載せる質量になります。

質量
質量(g) = 濃度(mol/L) × 体積(L) × MW(g/mol)

注意点

  • Tris の pKa は温度に強く依存します。おおよそ −0.028 / °C なので、25℃ で pH 8.0 に合わせた緩衝液は 4℃ では 8.6 近くになります。実際に使う温度で pH を合わせてください。この計算ツールの pKa は 20–25 ℃ で報告された文献値です。どの値がどの文書から来たかは、下の参考文献にあります。
  • この計算は近似です。ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式は、イオン強度と活量係数を考えに入れていません。濃度が高い場合や塩が多く共存する場合、実際の pH は計算値とずれることがあります。必ず pH メーターで確かめて調整してください。
  • 緩衝能が保たれるのは pKa の近くだけです。目標の pH が pKa から1単位以上離れると、一方の型がほとんどすべてを占め、緩衝の働きはほとんど残りません。その場合は別の緩衝液を選んでください。
  • リン酸やクエン酸のように pKa を複数もつ系では、目標の pH に合うものを選んでください。リン酸には 2.15 / 7.20 / 12.35 の3つがあり、中性付近で使うのは 7.20 です。
  • 水和物の場合は、結晶水を含んだ分子量を使ってください。質量が大きく変わります。
  • 緩衝液が実験に及ぼす影響も考えてください。リン酸はカルシウム・マグネシウムと沈殿をつくり、一部の酵素を阻害します。Tris はアルデヒドと反応します。

よくある質問

参考文献

緩衝剤一覧の pKa と Tris の温度補正の出どころです。Henderson-Hasselbalch の式自体は定義なので引用しません。

  1. Good NE, Winget GD, Winter W, Connolly TN, Izawa S, Singh RMM. (1966) Hydrogen Ion Buffers for Biological Research. Biochemistry 5:467–477.doi:10.1021/bi00866a011MES 6.15・PIPES 6.8・HEPES 7.55 の出典です。この論文の値は 20 ℃・0.1 M で測った見かけの pKa です。
  2. Goldberg RN, Kishore N, Lennen RM. (2002) Thermodynamic Quantities for the Ionization Reactions of Buffers. J Phys Chem Ref Data 31(2):231–370.doi:10.1063/1.1416902Acetate 4.76・Bis-Tris 6.5・Phosphate (pKa2) 7.2・MOPS 7.2・Carbonate (pKa2) 10.33 は、この総説の 25 ℃ の値(4.756・6.484・7.198・7.184・10.329)の丸めと一致します。Tris の温度係数 −0.028/℃ も、この文書のイオン化エンタルピー 47.45 kJ/mol から導かれます。

Tris 8.06・Tricine 8.05・CHES 9.3 は、上の2つの文書のどちらとも末位まで一致しません — Goldberg 2002 は 25 ℃ で 8.072・8.135・9.394、Good 1966 の Tricine は 20 ℃ で 8.15 です。この3つの値の1次出典は確保できませんでした。

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