使い方ガイド
- A260 の吸光度を入れます。
- 核酸の種類を選びます。種類ごとに換算係数が違います(dsDNA 50・ssDNA 33・RNA 40・ssOligo 33)。
- 測定のために希釈した場合は、希釈倍率を入れます。希釈していなければ 1 です。
- 試料の量を入れると、総量 (μg) も計算されます。任意です。
- A280 と A230 を入れると、純度比 A260/A280 と A260/A230 が並んで出ます。任意です。
💡 指数は e で入力できます。たとえば 1.5×10⁻⁵ は 1.5e-5 と入力します。
計算式と注意点
核酸は 260 nm 付近で最もよく光を吸収します。塩基の環構造のためです。吸光度は濃度に比例するので、既知の換算係数を掛ければ濃度が出ます。
- 濃度
- 濃度 (μg/mL) = A260 × 係数 × 希釈倍率
- 総量
- 総量 (μg) = 濃度 (μg/mL) × 体積 (mL)
換算係数は、A260 が1になるときの濃度です。
| 核酸の種類 | 係数 (μg/mL) |
|---|---|
| dsDNA(二本鎖DNA) | 50 |
| ssDNA(一本鎖DNA) | 33 |
| RNA | 40 |
| ssOligo(一本鎖オリゴヌクレオチド) | 33 |
係数が違うのは、スタッキングによって塩基の吸収の強さが変わるからです。二本鎖では塩基どうしが重なり合っているため、同じ量でも吸収が小さくなります。
μg/mL と ng/μL は数値として同じです。1 μg/mL = 1 ng/μL なので、単位を変えても数字は変わりません。記録に使っている単位のまま写せるように、両方を画面に出しています。
純度比
| 比 | 参考範囲 | 低いときに考えること |
|---|---|---|
| A260/A280 | DNA は 1.8 前後、RNA は 2.0 前後 | タンパク質、フェノールの残留 |
| A260/A230 | 2.0〜2.2 前後 | 塩(グアニジン・酢酸塩)、有機溶媒の残留 |
これらは参考の目安であって、合否の基準ではありません。下流の実験でうまくいくかどうかは、試料と用途によります。範囲を外れていても使えないとはかぎらず、範囲に入っていてもきれいだとはかぎりません。
注意点
- A260 が 0.1〜1.0 の外にある値は信頼しにくくなります。分光光度計の直線範囲から外れるためです。高すぎるなら希釈して測り直し、低すぎるなら濃縮するか、より感度の高い方法をご検討ください。
- ブランクは、試料が溶けているものと同じ溶液で取ってください。水なら水、TE なら同じ TE です。ブランクが合っていないと、とくに A230 が大きく狂います。
- 吸光度が測っているのは、無傷の核酸だけではありません。遊離のヌクレオチド・一本鎖の断片・残ったプライマーも 260 nm で吸収します。正確な定量が必要な場面では、蛍光色素を使う方法のほうが向いています。
- 吸光度では、混ざった試料の DNA と RNA を見分けられません。種類を選ぶのは計算に使う係数を選ぶことであって、試料に何が入っているかを確かめることではありません。
- 濁った試料は光を散乱し、高く出ます。A320 が0に近いことを確かめるのが通常の用心です。
よくある質問
2つの単位が同じ大きさだからです。1 μg/mL = 1 ng/μL です。計算の誤りではなく単位の定義であり、換算せずにどちらでも記録できるように両方を表示しています。
同じ質量でも、構造によって 260 nm での吸収が違うからです。二本鎖DNA では塩基が重なり合って吸収が小さく、係数は 50 になります。一本鎖では塩基がむき出しで吸収が大きく、33 になります。
この比だけで決まることではありません。1.8 を下回ればタンパク質やフェノールの残留を考えてもよい、というだけで、下流の実験が失敗するという意味ではありません。許容範囲は用途によって変わるため、各施設やプロトコルの基準に従ってください。
装置の直線範囲を超えている可能性が高いです。A260 が 0.1〜1.0 に入るまで希釈して測り直し、その希釈倍率を欄に入れてください。
測定のために試料を何倍に希釈したかです。試料 10 μL に水 90 μL なら10倍希釈なので、10 と入れます。希釈していなければ 1 です。
精製の過程で持ち込まれた塩や有機溶媒を捉えるためです。グアニジン・酢酸塩・フェノールは 230 nm 付近で吸収するため、A260/A230 が低いことは、その残留を考える理由になります。
吸光度は 260 nm で吸収するものをまとめて測るため、遊離のヌクレオチドや残ったプライマーも含まれ、実際にある無傷の核酸より高く出ることがあります。蛍光色素を使う方法は特定の形に選択的に結合するため、より特異的です。正確さが要る定量にはそちらをお使いください。